2024/11/23
鉄骨階段のデザインをもっと...
最近は、室内のフローリング貼りや、ボード貼りなど工事を行っておりまして、なかなか面白いネタが少なく更新が少なくなっていましたが、先日、気密試験を行いましたので、気密について書いてみたいと思います。
まず、気密試験について書く前に、一般的な住宅の気密について少し話しておきましょう。
そもそも気密が高い家と言うのはどういう家なのでしょう?簡単に言えば家の天井や壁に開いている隙間が少なく、隙間風が出たり入ったりしないので、冷暖房の効き良い家です。
まず、今現在、長期優良住宅やZEH住宅など様々な基準がありますが、気密(C値)を長期優良住宅ならこれくらい、ZEH住宅ならこれくらいと言う基準はありません。
しかし以前はあったんです。
上の図は平成11年の次世代省エネルギー基準の地域区分では、Ⅲ地域(宮城、長野、新潟など)以南の地域はC値5㎠/㎡以下、それより北の青森、岩手、北海道などはC値2㎠/㎡以下にしましょうと言う基準がありました。C値2㎠/㎡以上の建物が高気密住宅であると言う言い方がされることがありますが、それはこの時の基準を元に言われていることだと思います。
しかしこの基準ですが10年後の平成21年の省エネ基準の時に廃止されました。その理由は、近年の新築住宅では、この基準を設けなくても、十分に気密性能をクリアしているからとの理由で廃止されました。しかし、本当の所はどうでしょうか?
この平成21年の省エネ基準を決定するときもそうですが、こういう基準を決める時、日本の場合、大手ハウスメーカーの意見なども聞いて取り入れると言われています。その結果、軽量鉄骨造の住宅の場合などは、構造上、気密が取りにくい為、大手軽量鉄骨造のハウスメーカーからの圧力で、気密の項目は取り去られたと言われています。まあ、信じるか信じないかは、あなた次第ですが。
さて話は戻って、実際の気密測定の件ですが、測定自体は家全体を閉めきり、筒状の扇風機のような機械を設置して、家の中を減圧して測定します。
では高気密住宅のC値はどれくらいの数値が出ればいいのでしょうか?これも先ほどの話のように厳密にこれが高気密住宅だ!!っと言う基準はない為、先ほどの平成11年基準を元にC値2㎠/㎡以上が最低基準と言う人もいますが、一次換気システムを製造している多くの会社は、まず目標はC値1㎠/㎡以下を目指し、出来る限り数値を下げていきましょうと言う感じです。
で、実際に測定してみた結果は・・・C値1㎠/㎡でした。う~ん、微妙(-_-) 確かに高気密の一般的な基準はクリアしていますが、もっと上を目指したいのが心情ですよね。
では、なぜこの数値になったのか、もう一度考えてみましょう。
まず、今回この建物はボード気密工法と言う工法で気密を確保する事を考えました。なぜこの工法を選択したかと言うと、一般的なグラスウールの断熱材を使用した充填断熱の場合、気密を取ろうと思ったら、柱の一番内側(プラスターボードの次)に気密層と言われるビニールのシートを貼ります。このビニールのシートが気密と防湿の役割を兼ねています。これに対し、ボード気密の場合は、柱外側の耐力面材で気密を確保し、柱内側のビニールシートは防湿の役割のみとなります。こうする事により、内側の防湿シートが多少ラフに施工されても壁内結露の発生を防ぐ事が出来、また壁内に侵入した湿気も外側の通気層に排出されやすくなるので、この工法を選択しました。
そしてこの外側の耐力面材で気密をしっかり確保する為に、二つの方法があります。一つは耐力面材のつなぎ目に気密パッキンを挟み込んで耐力面材を打ち付ける方法、もう一つは耐力面材のつなぎ目の上から気密テープを張り付ける方法です。
(気密パッキン:参考) (気密テープ:参考)
どちらの方法で気密をとっても構わないのですが、一般的には気密テープで処理する事が多いと思います。しかし、今回は気密パッキンを選択しました。その理由は気密パッキンの方が劣化しにくいと言う考えがあるからです。この気密ですが新築当初から年月が経つと数値が下がっていくと言う事が言われています。それは木造ならば水分が抜けて気が瘦せたり、微妙に曲がったりして隙間が出来る事もあるでしょうし、また発泡系の断熱材をしている場合、材料自体が収縮したり、木の痩せに追従出来なかったりと言う問題があるからだと思います。その為、気密パッキンを採用したのですが、結構施工に手間が掛かったり、挟み込むので表から目視出来ずうまく施工で出来ているか少し心配な部分もありました。施工の精度と言う観点から見れば、しっかりと目視が出来る気密テープの方が良いかもしれません。でも劣化が・・・この辺りは悩む所ですね。ベストはパッキンとテープの併用ですが、やはり費用が・・・。悩みますね。
そしてもう一つ、ここが影響したと思われる部分が・・・屋根
この建物では、屋根はパネル構造となっています。登り梁などの材料を表しで使いたかった為、またパネルの下側を仕上がりとしています。すっきりと綺麗な見た目にしたかったので、本ザネ加工された杉板を使用しています。本ザネなので板と板はキッチリと引っ付いているはずなのですが、やはり相手は空気ですからほんの少しの隙間も容赦してくれません。本ザネの隙間を通して、断熱材上の通気層に空気が逃げているのだと思います。ここは断熱材にフェノールフォームを使用しているので、ペーパーバリヤ等の防湿層は特別に設置していません。ここは、パネルに杉板を貼る前に気密シートを貼る等の改善を考えないといけませんね。
他にはこの建物には、一部バイク用のインナーガレージがあります。このインナーガレージは断熱ラインの外側(簡単に言えば家の中にあるのに、外部として扱われます)になるのですが、耐力面材は外壁のラインで施工されています。ガレージの入口はシャッターなので気密性能は望めません。その為、インナーガレージと部屋を間仕切る壁を断熱・気密ラインとしているので、この間仕切り壁部分のみ断熱材と防湿層で気密を取っているので、その点も気密性能に影響した所もあると思います。
これらの点を改善していけば、まだまだ気密性能については上げていけそうですね。またなぜ断熱材にグラスウールを使っているかと言う点に関しては、四十路工務店営業マン(本厄)の自宅建築日記 その⑮をご覧ください。
また、実は壁にボードを貼り、仕上げを掛けて行けば気密性能はまだ上がっていくと思います。それは、グラスウールを充填断熱に使う一つの利点かもしれませんが、今回、防湿シートに包まれた一般的によく言う、耳付きグラスウールと言う断熱材を使用しています。
上の写真の白い袋に包まれた断熱材が耳付きグラスウールです。この断熱材の袋から横に出ている耳の部分を柱や間柱にタッカーで止めて断熱材を貼りつけます。でもこの状態では気密・防湿層の役目を果たしていません。そこで壁の石膏ボードを張り付ける事により、隙間がなくなり防湿・気密層の役目を果たします。今回、ボード気密工法なので、気密は耐力面材で確保するのが基本ですが、ボードを張り付けた後には、耳付きグラスウールの防湿・気密層も必然的に形成されるので、ボードを貼ると更に気密が上がってくると言う訳です。
気密工事は下手をすると逆に集中結露を起こしてしまう場合もあります。なぜその工法を選んでいるのか?そしてしっかり施工できているのか?将来的な変化に対応できるのかなど、たくさんのポイントがあります。次々と新しい工法が出てくる時代ですが、本当にそれで良いのか?しっかりと見定めるのが重要だと思います。
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